P-MAXの概要
P-MAXとは何か
P-MAXとは、2021年にリリースしたGoogle広告のキャンペーンタイプです。
これまでのキャンペーンタイプは、検索やディスプレイ、YouTubeなど、配信先ごとにキャンペーンを作成する必要がありました。しかし、P-MAXでは、1つのキャンペーンですべてのGoogle広告の広告枠を配信できるため、運用の手間が省けます。
また、P-MAXは設定したコンバージョン目標の達成に向け、配信先、入札、クリエイティブの全てを機械学習が自動で最適化します。そのため、広告配信の専門知識がなくても、効果的な広告配信を行うことができ、Googleの発表では、P-MAXを利用した結果、P-MAX利用前のコンバージョン単価を維持しながら、コンバージョン数を平均で18%以上も増加しているようです。
参考:P-MAX を使って Google の広告チャネルの全域でコンバージョンを拡大
しかし、その一方でデメリットとして、配信結果を詳細に確認することができない、細かい調整ができない等があるため、デメリットをしっかり理解した上で導入することが重要です。
P-MAXの配信先
P-MAXキャンペーン1つで、以下の配信面に広告配信することができます。
- Google検索
- Googleショッピング広告 ※Googleマーチャントセンター連携している場合
- Googleディスプレイ
- Googleマップ
- YouTube
- Discover
- Gmail
画像引用元:P-MAX キャンペーンはすべての広告主を対象に開始されます
ちなみに、P-MAXがリリースされる前に、P-MAXの下位互換のようなキャンペーンタイプ「スマートショッピングキャンペーン」というものがありました。(現在ではキャンペーン作成不可)こちらも一つのキャンペーンで複数の配信面に広告配信できるキャンペーンタイプで、P-MAX同様YouTubeにも配信されましたが、スマートショッピングキャンペーンはYouTube動画内には広告配信されませんでしたが、P-MAXは動画内にも配信されるので注意が必要です。
P-MAXのメリット
広告の表示回数の最大化が期待できる
P-MAXでは、検索、ディスプレイ、YouTube、Gmailなど、すべてのGoogle広告の広告枠を配信することができます。これまでチャレンジしてこなかった広告枠がある場合、配信面が増える分だけ広告の表示回数増加が期待できます。
機械学習の恩恵を最大限受けることができる
これまでも「スマート○○」といったキャンペーンや、自動入札など機械学習をベースとした機能がありましたが、キャンペーンのCV数が少ないことが原因で機械学習が効率的に進まないという課題がありました。キャンペーンタイプ別に点在していたキャンペーンをP-MAX一つにまとめることで、CV数を一か所に集中するので、機械学習が効率的に進むことによるコンバージョン数の最大化も期待できます。
運用にかける人的コストを削減できる
これまでのGoogle広告では、検索やディスプレイ、YouTubeなど、各チャネルごとにキャンペーンを作成する必要がありました。また、予算や入札、ターゲティングの調整もそれぞれ対応する必要があり、運用には多くの手間と時間がかかっていました。
P-MAXキャンペーンでは、これらの作業をすべて自動化できるため、運用者の負担を大幅に軽減することができます。また、機械学習によって最適な配信面やクリエイティブが選択されるため、運用者の経験やスキルに左右されることが非常に少なくなりました。
そのため、P-MAXキャンペーンは、広告運用の効率化を図りたい企業や、運用にかける人的コストを削減したい企業にとってはメリットと言えるでしょう。
P-MAXのデメリット
P-MAXのデメリットはいくつかあるのですが大きく2つに分けられます。
- 分析できる範囲が少ないことによるデメリット
- 学習期間の長いことによるデメリット
後者の「学習期間の長いことによるデメリット」については、Google広告に顧客データなどをインポートすることで学習期間を短縮が期待できます。学習期間がネックで導入を見送っている方は一度検討されることをオススメします。
それではP-MAXのデメリットをご紹介します。
分析できる範囲が少ないことによるデメリット
細かい調整ができない
P-MAXでは、機械学習で広告の配信先、入札、クリエイティブを自動で最適化するため、細かい調整ができません。
広告メニュー毎に予算管理したい場合や、特定の配信先の入札をコントロールしたい場合は、他のキャンペーンタイプを使用する必要があります。
ちなみに、調整できる部分が少ないP-MAXでも除外キーワード、除外プレースメントは可能です。(除外キーワードは指名検索のみ)
しかし、いずれもアカウント単位での除外となってしまうため慎重に選ぶ必要があります。それぞれの除外方法は以下のブログをご覧ください。
PDCAを回すことが困難
リリース当初に比べて分析できる範囲が広くなりましたが、他のキャンペーンタイプに比べるとまだまだ限定的です。そのため、見えるデータだけで結果を類推してPDCAを回す必要があります。
広告配信の専門知識がなくても配信が可能なP-MAXですが、配信結果から類推するという意味では、筆者はGoogle広告に関する専門知識を有している人でないと継続的に成果を出すことは難しいと感じております。
学習期間の長いことによるデメリット
機械学習の恩恵を最大限受けるためには相応の出費が必要
P-MAXの力を最大限発揮させるためには、P-MAXにある程度データを溜める必要があります。
GoogleはP-MAXをスタートするにあたり以下の設定を推奨しています。
- データ蓄積期間は6週間
- 1日の予算は、10件のコンバージョンを獲得するために必要な金額
参考:すべての業種向けの P-MAX キャンペーンの最適化のヒント
例えば、1件のコンバージョンに1,000円かかる場合、日予算の推奨値は10,000円です。それに加えて、P-MAXが学習完了するには6週間ほどとされておりますので、先ほどの日予算に42日(6週間)をかけますと、1カ月に420,000円ほど必要になります。
あくまで一例ではあるものの、筆者の経験からも学習完了までに数十万円かかったケースもあり、相応の出費を覚悟する必要があります。
短期的には成果が悪化する可能性がある
「機械学習の恩恵を最大限受けるためには相応の出費が必要」に関連した話ですが、学習期間中は費用はしっかり発生するものの、P-MAX導入前に比べてコンバージョンが減少するケースも少なくありません。それは、P-MAX立ち上がり当初は、学習のため様々な広告枠に配信されたり、これまでリーチしてこなかったKWにも拡張して配信されるためです。
これまで検索広告、ショッピング広告といったニーズが顕在化しているキャンペーンタイプに集中投資していた場合などは、特に成果が悪化してしまう傾向にあります。
短期間の広告配信には不向き
こちらも「機械学習の恩恵を最大限受けるためには相応の出費が必要」に関連した話ですが、P-MAXと学習はセットのため、短期のイベントやセールなどの広告には向きません。
Googleとしても、学習期間も考慮して早めに広告配信することを推奨しております。
週末セール: 2~3 週間前からキャンペーンを開始して、店舗をアピールする一般的なものからセールに特化したものへとクリエイティブを頻繁に更新していきます。こうした戦略を取ることで、パフォーマンスを損なうことなく、時系列ベースのプロモーションを行うことができます。
引用:オンライン販売(ショッピング以外)の促進を目指す P-MAX キャンペーンの最適化のヒント
予算に余裕がある場合は2-3週間前からのスタートしても良いかもしれませんが、イベント期間中だけ配信したいケースがほとんどだと思いますので短期間の配信には向いていません。
P-MAXの設定方法
P-MAXは従来のキャンペーンタイプと構造が違うため、「広告グループ」という概念がなかったり、新しい設定項目があったりして戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。
以下の手順で設定すれば問題ございませんので設定を進めましょう。
- キャンペーン作成
- キャンペーン目標の選択
- キャンペーンタイプの設定
- コンバージョンの決定
- ショッピング広告を配信する場合はGMCアカウント設定
- キャンペーン名の設定
- 単価・目標の設定
- 顧客の獲得の設定
- 地域・言語の設定
- 自動アセット設定
- More settingsの設定(ブランドの除外する場合など)
- アセットグループ名の設定
- ショッピング広告を配信する場合は対象商品フィードの選択
- アセット作成
- オーディエンスシグナル設定
- 1日の予算設定
1.キャンペーン作成
キャンペーンの画面、左上「+」を選択し「新しいキャンペーンを作成」
2.キャンペーン目標の選択
画像では「目標をしてせずにキャンペーンを作成する」を選択しておりますが、P-MAX赤枠のキャンペーン目標を選択できます。
3.キャンペーンタイプの設定
4.コンバージョンの決定
5.ショッピング広告を配信する場合はGMCアカウント設定
アカウント内で登録されているコンバージョンが表示されますので、P-MAXで最大化したいコンバージョンを選択しましょう。またショッピング広告も配信したい場合は、アカウントに登録されている任意のマーチャントセンターを選択しましょう。
6.キャンペーン名の設定
7.単価・目標の設定
コンバージョン数を伸ばしたいのか、それともコンバージョン値を伸ばしたいのか目標を選択し、選択した目標の条件を設定しましょう。そして、省略可の「目標広告費用対効果を設定する」(目標が「コンバージョン」の場合は「目標コンバージョン単価を設定する」)は、P-MAXが過剰に配信されすぎないよう必ず設定するようにしましょう。
8.顧客の獲得の設定
新規の方への広告配信を強化したい方は設定しましょう。(特に希望が無ければ設定する必要がありません)
「顧客の獲得」を設定することで、新規の方にどの程度配信するのかを設定することができます。
9.地域・言語の設定
広告配信したいエリア、言語を選んでください。
10.自動作成アセット設定
11.More settingsの設定(ブランドの除外する場合など)
ここの設定は注意が必要です。デフォルトのままの場合、意図しない広告配信に繋がってしまう可能性があるためです。
自動作成アセットについては以下のブログで紹介しておりますのでこちらをご覧ください。
12.アセットグループ名の設定
13.ショッピング広告を配信する場合は対象商品フィードの選択
14.アセット作成
各項目を入力していきましょう。
ちなみに、各項目の上限数などは次のようになっています。
アセット | 下限数 | 上限数 | 規定と備考 |
---|---|---|---|
画像 | 1 | 15 | 横長(1.91:1)1,200×628(推奨)、600×314(最小)、最大 5,120 KB 正方形の画像(1:1)推奨サイズ 1,200×1,200、最小サイズ 300×300、最大ファイルサイズ 5,120 KB 縦画像(4:5)960×1200 推奨 480×600 分 ※縦画像は省略可いずれも最大ファイルサイズ: 5120 KB |
ロゴ | 1 | 5 | 正方形のロゴ(1:1)推奨サイズ: 1200×1200最小サイズ: 128×128 横長ロゴ(4:1)推奨サイズ 1,200×300、最小サイズ 512×128 ※横長ロゴは省略可いずれも最大ファイルサイズ: 5120 KB |
動画 | 1 | 5 | 横長、縦長、正方形のいずれか、動画の尺(長さ)10 秒以上 |
広告見出し | 3 | 5 | 文字数:全角 45 文字(最大半角 90 文字) |
長い 広告見出し |
1 | 5 | 文字数:全角 45 文字(最大半角 90 文字) |
説明文 | 1 | 5 | 文字数:全角 45 文字(最大半角 90 文字)が1つ ※文字数:全角 30 文字(半角 60 文字)以内が1つ以上必要 |
行動を促す フレーズ |
1 | 1 | リストから選択 ・自動(推奨)・詳細・見積もりを希望・申し込む・登録・お問合せ・ダウンロード・今すぐ予約・今すぐ購入 |
その他の オプション |
0 | 2 | 表示 URLパスを設定 文字数:全角7文字(半角 15 文字) |
15.オーディエンスシグナル設定
オーディエンスシグナルとは、特定のユーザー群を指しており設定した方が良い項目です。ビジネスに合ったオーディエンスシグナルを設定することで、P-MAXが効率よく見込み顧客にリーチしてくれるため、設定することで学習期間の短縮が期待できます。オーディエンスシグナルにはいくつか種類があるのですが、コンバージョンユーザーのオーディエンスリスト、顧客データは特におすすめです。
オーディエンスシグナルについては以下のブログで紹介しておりますのでこちらをご覧ください。
16.1日の予算設定
最後に1日の予算を設定し完了となります。
P-MAXの運用のポイント
検索キャンペーンと並走させる
P-MAXは既存の広告キャンペーンを補完して、全体のコンバージョン数を増やすためのものです。そのため、今の広告キャンペーンは変えずに、追加でP-MAXキャンペーンを行うのが推奨されています。
通常のキーワード ベースの検索キャンペーンとの併用に最適で、1 つのキャンペーンで Google が持つ広告チャネルと広告枠をすべて活用し、Google の AI によりコンバージョン数と獲得価値を高めることができます。
引用:Google のさまざまな広告チャネルをフル活用してコンバージョンを促進できる P-MAX キャンペーン
ちなみに、ユーザーの検索語句と同一のキーワードが検索キャンペーンで登録されている場合は、P-MAXではなく検索キャンペーンが優先されて配信されます。もしP-MAXでCVを多く獲得している検索語句があれば、さらに増やせるよう、検索キャンペーンで該当キーワードを登録し、個別で管理するのもおすすめします。
除外を活用する
P-MAXでもプレースメント、除外キーワードが可能です。ブランドイメージを下げてしまうようなサイト/アプリを除外をしたり、事業と関連性のないキーワードを除外することができます。それぞれ条件があり除外設定には注意が必要なのですが、詳しくは以下のご覧ください。
分析できる箇所は全て確認する
アセットグループ毎の成果の他、ランディングページ、検索語句を確認することができます。意図しているページがランディングページになっているか、また成果に繋がりにくいキーワードで配信されていないか定期的に確認しましょう。ランディングページ、検索語句の確認方法は以下をご覧ください。
まとめ
P-MAXはとても魅力的なプロダクトである一方で、デメリットも多いです。P-MAXを導入することによるメリットデメリットをしっかり把握した上で導入を検討しましょう。