Yahooディスプレイ広告は、様々なターゲティングが用意されているため、自社に合ったターゲティングなどがあれば活用していきたいものです。
しかしその一方で、手動ターゲティングはターゲティングの掛け合わせや、オーディエンスリストの作成などが必要なため、どうしても管理や運用が複雑化してしまいます。
またそれだけでなく、設定範囲外に存在する潜在的な顧客を見逃してしまう可能性があったり、ターゲティング毎の成果比較を重視するあまり、コンバージョンデータを活用した自動入札という近年のトレンドから離れてしまう運用にならざるを得ないという課題もあります。
このような広告運用の課題を解決し、より賢く、より効率的に成果を最大化するための機能が、Yahoo!ディスプレイ広告に新たに搭載された「スマートターゲティング」です。
スマートターゲティングについて、【2025年3月最新】Yahoo!ディスプレイ広告(YDA)、最近のアップデートやリリースのまとめのブログでもご紹介しましたが、本記事ではスマートターゲティングに特化して、深掘りして解説します。
YDAのスマートターゲティングとは?
スマートターゲティングは、Yahoo!ディスプレイ広告(YDA)に搭載された、「コンバージョン(成果)に至る可能性が最も高いユーザー」に、ターゲティングを自動で最適化してくれる機能です 。
AIが様々な広告設定情報や過去のコンバージョンデータを基に学習し、広告主が設定したターゲティング条件の範囲内だけでなく、その外側にも潜在的な顧客を見つけ出すため、コンバージョンの増加が期待できます。また、ターゲティングを自動的に拡張してくれることから、成果の向上というだけでなく工数削減も期待できます。
スマートターゲティングのメリット
コンバージョン数の増加が期待される
スマートターゲティングの最大の魅力は、広告の「成果」に直結する点です。AIがコンバージョンしやすいユーザーをピンポイントで探し出すため、広告の費用対効果を高め、最終的なコンバージョン数の増加が期待できます。
LINEヤフー社が公開している製薬・医療品の事例では
停滞していたコンバージョン数を改善するためにスマートターゲティングを導入し、導入からわずか2週間でコンバージョン数が130%も増加した事例もあります。
引用:LINEヤフー株式会社 スマートターゲティング正式リリースについて
※スマートターゲティングと「コンバージョン数の最大化(目標CPAあり)」の入札戦略を組み合わせ
一時的にCPA(顧客獲得単価)が約11%悪化するという変化が見られたようですが、その後22日間継続して利用することで、CPAの大きな悪化を防ぎつつ、コンバージョン数を増やし続けることに成功したとのことです 。
この事例の通り、スマートターゲティングが単なる「効率化」だけでなく、「売上や成果に直結する機能」であり、学習が進むにつれてCPAの安定化とコンバージョン数の持続的な増加が期待できると考えられます。
運用工数の削減
新しいターゲット層にアプローチする際、手動では新しいターゲティング条件を追加したり、既存の条件を調整したりする手間が発生しますが、スマートターゲティングはチェックボタン一つで設定ができるため工数削減に繋がります。
効率的にリーチを拡大できる
画像引用元:LINEヤフー株式会社 スマートターゲティング正式リリースについて
手動ターゲティングでも広いターゲットに配信することはカンタンですが、そのほとんどのケースで成果が伴わないでしょう。
スマートターゲティングは、AIが学習し、これまでのターゲティングでは見つけられなかった「潜在的なコンバージョン見込みの高いユーザー」にも広告を届けることが可能なため効率的にリーチを拡大することが期待できます。
例えば、広告グループが「30代男性」をターゲットに設定している場合、スマートターゲティングは、その中で「最もコンバージョンしやすい30代男性」に絞り込んで広告を最適化します 。
※デバイス、性別、年齢、曜日・時間帯、地域、プレイスメント、コンテンツキーワードは拡張して配信されることはありません。(詳細は後述)
スマートターゲティングの注意点
1. 学習期間への配慮が必要
スマートターゲティングは、設定後すぐに最大限のパフォーマンスを発揮するわけではありません。
AIが広告グループのデータ(コンバージョンデータ、クリックデータなど)を学習し、最適化を開始するまでに数日から2週間程度の「学習期間」が必要です 。
スマートターゲティングの利用時には、データが蓄積しターゲティングが最適化されるまでの学習期間が必要です。
学習期間は数日から最大14日程度で、キャンペーンのコンバージョン数により変動します。引用:LINEヤフー株式会社 スマートターゲティング正式リリースについて
この学習期間中は、設定した既存のターゲティング条件に基づいて広告が配信されます。
しかし、広告配信間もない場合は、数日で学習期間が終了し、配信が拡大されることもあります。配信実績が豊富なアカウント、キャンペーン、広告グループで実装される場合は問題ないことが多いのですが、実績の少ないアカウントの場合は導入は慎重に検討しましょう。
ちなみに、Meta広告のように学習の進捗状況(「学習中」「学習完了」など)は、管理画面で確認することはできません 。
そのため、導入後は焦らず、2週間程度は様子を見ることが推奨されており、学習期間中にターゲティング設定を頻繁に変更すると、AIが再学習を必要とし、最適化が遅れる可能性があるため注意が必要です。
2. 拡張して配信されるターゲティングと、そうでないターゲティングが存在する
スマートターゲティングは「自動で最適化」を行いますが、広告主が設定しているターゲティングによって「広がり方」が異なるため必要です。
画像引用元:LINEヤフー株式会社 スマートターゲティング正式リリースについて
自動最適化される(≒拡張される)ターゲティング
- サーチキーワード
- オーディエンスリスト ※除外している場合は配信対象外のまま
自動最適化されない(≒拡張されない)ターゲティング
- 年齢
- 性別
- デバイス
- 曜日・時間帯
- 地域
- コンテンツキーワード
- プレイスメント ※除外している場合は配信対象外のまま
3.コンバージョンが少ない場合は上手くいかない
LINEヤフー社が公開している事例と、弊社での配信実績を踏まえるとコンバージョンの少ない広告グループではスマートターゲティングが上手くいかないことがほとんどです。
先ほどから引用しているLINEヤフー社が公開しているスマートターゲティングの成功事例を確認しますと、上手くいっている事例の過去7日間の平均コンバージョン数は73CVとなります。
(事例①179CV、事例②49CV、事例③16CV、事例➃49CV)
逆に、スマートターゲティングを利用して成果が悪化してしまった事例は1件紹介されており、その場合は過去7日間のコンバージョン数は34CVです。
画像引用元:LINEヤフー株式会社 スマートターゲティング正式リリースについて
スマートターゲティングは主にコンバージョンデータを参照してターゲティングを自動調整するため、元となるコンバージョンデータが多ければ多いほど上手く拡張してくれると考えれます。
広告媒体推奨のコンバージョン数は公開されていないものの、公開されている事例や弊社の実績を踏まえますと広告グループ単位で過去7日間で40CV前後の場合に検討するのがおススメです。
「類似ユーザー」との違いは?スマートターゲティングとの使い分け
ターゲットとなるユーザーを自動で抽出する機能として、Yahoo!広告には「オーディエンスリスト(類似ユーザー)」という機能もあります。
一見似ていますが、それぞれ異なる特徴があります。これらの違いを理解し、自社に合ったターゲティングを利用しましょう。
スマートターゲティング | 類似ユーザーターゲティング | |
目的 | コンバージョンに至る可能性が高いユーザーへの広告配信を自動で最適化し、広告効果の改善・拡大、運用工数削減 | 自社のオーディエンスと類似する行動履歴を持つ新規ユーザーをターゲットにし、コンバージョン獲得につなげる |
仕組み | コンバージョンデータや広告設定情報などを基に、ターゲティングを自動で最適化・拡大・絞り込み | 元となるオーディエンスリストのユーザーと似た行動履歴を持つユーザーをシステムが特定し、広告を配信 |
主な参照データ | コンバージョンデータ、広告配信時の様々な情報、広告設定情報 | 元となるオーディエンスリストのユーザーの行動履歴 |
ターゲット拡張の柔軟性 | 「コンバージョンに至る可能性が高いユーザーへの拡張」が主体で、類似ユーザーより柔軟性は低い | 類似度の拡張範囲を10段階でコントロール可能。元となるオーディエンスリストを柔軟に指定可能 |
推奨条件 | キャンペーン目的: コンバージョン、アプリ訴求 入札戦略: コンバージョン数の最大化、拡張クリック単価、コンバージョン価値の最大化 |
元となるオーディエンスリストの過去28日間のユーザーサイズが100以上。リストの質が成果に影響 |
学習期間 | 数日から最大14日程度の学習期間が必要。 | 「学習期間」の記載なし |
まとめ
Yahoo!ディスプレイ広告のスマートターゲティングは、「コンバージョン数の最大化」と「運用工数の削減」という、運用者にとって非常に魅力的な2つのメリットを同時に実現します。AIが賢く最適なユーザーを見つけ出し、これまでリーチできなかった潜在顧客層にも広告を届けることで、広告効果を飛躍的に向上させることが期待されます。
しかし、その導入にあたっては、いくつかの注意点も理解しておく必要があり、理解がないまま進めてしまうと返って成果を悪化させてしまうリスクがあります。特に「導入前のコンバージョン数」という点は、しっかり押さえておくべきです。
「スマートターゲティング」を賢く活用し、よりスマートで成果の出る広告運用を実現していきましょう!