目まぐるしくトレンドが移り変わるweb広告界ですが、いまだに多くの事業者で主流となっている広告キャンペーンは「検索広告」かと思います。
ユーザーが検索した語句に対して関連した広告を表示することができるため、ディスプレイ広告やSNS広告と比べても高いCVRが期待でき、広告初心者でも運用しやすい手法です。
近年、Googleでは検索広告と「P-MAX」「デマンドジェネレーション」をフル活用した運用方法を「Power Pack」と呼び、従来の検索広告に加えて進化したAI機能を駆使することで成果を最大化させていく運用方法を強く推奨しています。
参考:Google による広告運用 Power Pack で顧客接点を最大化
AI主流の現代においても重要視されている検索広告ですが、
「昔と変わらない方針で運用を続けて良いの?」
「P-MAXの検索広告とどうやって役割分担していけば良いの?」
など、運用者の悩みは尽きないと思います。
今回はそんな検索広告について、基本を踏まえながらどのように設計していくのが良いのか、できる限り具体的にまとめました!
運用初心者の方も、最近成果が落ちてきて悩んでいるベテランの方も、基本に立ち返るつもりでご一読いただけますと幸いです。
1.キーワード選定~広告キャンペーン設計のコツ
検索広告でもっとも重要なのが、広告を配信するキーワードの選定です。
自社商材、サービスを購入する方はどのような語句で検索するのかを分析し、その際のユーザーマインドを想像しながらもっとも反応してくれそうな広告文を検討していきます。
キーワードの選定とキャンペーン設計については、そのキーワードの「検索ボリューム」と「CVR(コンバージョン率)」を元に考えるとよいでしょう。
設計としては、まずは以下の基準で検討してみることをお勧めします。
①自社商材の特性にもっとも合致しているキーワード群
└例:「ソイプロテイン 初心者 安い」「ソイプロテイン 鉄分 チョコレート」
└マッチタイプ:完全一致(またはフレーズ一致)
└予測CVR:高い
└検索ボリューム:少ない場合が多い
└推奨予算:高額
└目的:コンバージョンの獲得。広告文やLPでは、ユーザーに実行してほしいアクションを直接的に訴求すると有効。
└重要ポイント:具体的な検索語句に対して配信できるため、広告文やLPをニーズに合わせて最適化させやすい。
結果として広告の品質スコアが向上することで、CPC低下によるCPA低下が期待できる。
②自社商材に興味をもってくれそうなユーザーが検索しているキーワード群
└例:「ソイプロテイン 初心者」「ソイプロテイン 鉄分」
└マッチタイプ:フレーズ一致(またはインテントマッチ)
└予測CVR:中間
└検索ボリューム:少ない~多いまで様々
└推奨予算:中間
└目的:見込み顧客の獲得。比較検討の候補に入り込むことで、今後のCVR向上を図っていく。
想定以上の成果を出せる場合もあるので、キーワードの特性ごとに広告グループを細分化して細かく運用していくことも有効。
└重要ポイント:キーワード特性によって検索ボリュームや予測CVRも様々。
広告文はキーワード特性に合わせて出し分け、成果に応じて①や③へのキーワード移動など柔軟な調整を行っていく。
③認知拡大、中長期的な成長に貢献しそうなキーワード群
└例:「ソイプロテイン」「プロテイン 初心者」
└マッチタイプ:インテントマッチ
└予測CVR:低い
└検索ボリューム:多い
└推奨予算:少額
└目的:認知度を広げることで将来の見込み顧客数の増加を図る。
ニーズが多岐にわたることで競争は激しくCVRは低いが、リーチできるユーザー範囲が広がるため、目先の利益ではなく将来と投資として有効。
└重要ポイント:CPCが高くなりすぎないよう注視する。
除外キーワード設定を活用し、すそ野を広げつつも無駄なクリックを防ぐことで効率化を図る。
2.入札戦略の判断基準
※記事で伝えたいことを分かりやすくするため、今回は広告目標を「CV数」として説明します。
①自社商材の特性にもっとも合致しているキーワード群
理想の入札戦略は、「コンバージョンの最大化(目標コンバージョン単価を設定しない)」です。
多くの事業者がKPIにしていると考えられる「コンバージョン単価」ですが、入札戦略としてはこれを設定しない運用がもっとも”理想”なのではないかと思います。
「コンバージョン数の最大化」は「目標コンバージョン単価」(以下「tCPA」と表記)と比較して、以下のようなメリット&デメリットがあります。
【メリット】
・tCPAのような制限を設けないことでGoogleの機械学習が進みやすい。
そのため「この検索語句で、このユーザー属性の人が、この時間に検索したらCVする」という予測モデルの精度が上がり、最もCVしやすいオークションに集中的に入札することが期待できる。
・検索ボリュームと設定予算に大きな乖離がない場合、基本的に設定予算分の配信がされることで広告費の消化予測が立てやすい。
・tCPAでは直近でCPAが高騰すると配信が抑制傾向になる場合があるが、CV最大化では直近のCPAに関係なく予算上限の範囲で配信し続ける。
結果として、中長期的に見ると目標CPA内でCV数を増やせている場合も多い。
・①で設定するキーワードはボリュームが小さい場合が多く、tCPAを入れることでさらに配信が抑制されるリスクがある
【デメリット】
・CPAが高騰しやすくなる。
→コンバージョン単価やCV数に応じてテコ入れするタイミング(期間や数値など)を明確にした運用を行うことが重要。
・想定以上の広告費の使用
→Google広告では月単位では予算内に収まるが、日単位では設定予算の最大2倍使用される場合がある。
数日分の広告費を見て慌てて止める、といったことが無いように、2週間~1カ月のスパンで広告費を想定して運用することが重要。
以上を踏まえ、CV最大化を使用しつつ、デメリット部分の対策を徹底することで成果の最大化に近づけるのではないかと考えます。
②自社商材に興味をもってくれそうなユーザーが検索しているキーワード群
推奨する入札戦略は「コンバージョン数の最大化(tCPA)」です。
②ではキーワード特性によって広告グループを細分化するため、それぞれ「検索ボリューム」や「予測CVR」が異なる広告グループ設計となります。
ここで安易にCV最大化を使用すると、検索ボリュームが多い広告グループに配信が寄る傾向があります。
検索ボリュームが多い=競合性が高い場合が多いためCPCが高騰しやすく、結果としてその広告グループではCPAが高騰しやすいリスクがあります。
一方で「検索ボリュームが小さくても実はCVRが高かった」可能性のあるグループへの配信は抑制され、「成果の出ないキャンペーン」と間違った判断をしてしまうリスクもあります。
そこで、入札戦略は「コンバージョン数の最大化(tCPA)」を選定します。
CPAの安いグループではtCPAを引き上げ配信を促し、CPAの高いグループではtCPAを引き下げ配信を抑制するなど各広告グループの成果に応じた調整を行うことで、キャンペーン全体での最適化を図れます。
中長期的に配信することで、新たな「①」を発掘することも期待できるでしょう。
③認知拡大、中長期的な成長に貢献しそうなキーワード群
③のキーワード群は短期的な成果やボリュームが読みにくいところがあるため、「CV最大化」や「個別クリック単価」など目的に応じて任意に選択いただいて構いません。
今回は「クリック数の最大化」を使用する手法をご提案します。
③では、検索ボリュームの大きい「ビッグキーワード」をインテントマッチにて配信します。
その際、CVRの低いクエリに大量に配信されてしまうことが懸念事項として挙げられます。
ビッグキーワードは競合性が高くCPCも高騰しやすい傾向にあることから、大量の検索語句に配信されることも相まって著しく成果が悪化してしまう可能性を秘めています。
これを防ぐためには、少しでも見込みあるユーザーに極力安い費用で配信することが重要なため、「CV」ではなく「クリック」というハードルの低いアクションを目的とした「クリック数の最大化」の活用をご提案します。
コツとしては、
└キーワード→インテントマッチでビッグキーワード~①②以外のロングテールキーワードを大量(数十~数百)に設定
└広告文→広告カスタマイザ機能を活用し、すべてのキーワードに広告文を設定
のように行います。
※広告カスタマイザ機能については、以下の弊社記事を参照ください。
【画像付き】Google広告で使える広告カスタマイザとは?設定方法やメリットを紹介! Google広告
こちらの手法を行うと、検索語句との関連性が高い広告文が表示されることでCTRの向上が期待できます。
CTRが向上することで品質スコアが上がり、結果として品質スコアが高い検索クエリでの表示機会が増え、CPC低下も期待できます。
大量のインテントマッチキーワードによりリーチ数を確保しつつ、広告カスタマイザ機能を使ってCTRが高いキーワードを発掘、優先配信していくことで「安く見込みがあるキーワード」を発掘できる可能性があがります。
広告カスタマイザの設定やキーワード入稿など作業工数はかかりますが、将来的に商材・サービスを伸ばしていきたい方は試してみて損はない手法かと考えます。
3.広告文の改善
最後は広告文についてです。
訴求や言い回しを変えた広告文を、同期間や予算、ターゲティングでABテストし、CTRやCVRを見ながらより良い広告文を追求するのが従来からのPDCAの回し方だと思います。
しかし、Google広告をはじめレスポンシブ検索広告(複数の広告見出しや説明文を入稿し様々な組合せを機械学習する)が主流となっている現在では、以前のようなABテストを行うのがかえって難しい状況になっています。
レスポンシブ検索広告では、以下のポイントを押さえながら改善を進めていくのが良いでしょう。
①見出しや説明文は配信結果を参考に入れ替え、広告アセットの充実度が「高い」以上を目指す
②パフォーマンスの高いキーワードを広告見出しや説明文に含める
③訴求切り口に応じて広告グループを分け、各広告グループ内のレスポンシブ検索広告は「1つ」にする
①見出しや説明文は配信結果を参考に入れ替え、広告アセットの充実度が「高い」以上を目指す
レスポンシブ検索広告では、最大15個の広告見出しと4個の説明文を入稿でき、各広告見出しや説明文のインプレッション、クリック、コンバージョンなどの各指標に基づいた数値を確認することができます。

まずはここの数値を参考に、CTRが低い広告や、CTRが高いがCVRが低い広告を見つけ出し適宜入れ替えます。
これを繰り返すことで、レスポンシブ検索広告ごとに割り当てられる「広告アセットの充実度」にて「高い」以上を目指します。
※「広告アセットの充実度」では、パフォーマンスの向上につながる属性がレスポンシブ検索広告のアセットにどの程度反映されているかについて、将来を見据えたフィードバックが提供されます。
②パフォーマンスの高いキーワードを広告見出しや説明文に含める
これは前述の「広告アセットの充実度」の向上にもつながっていくのですが、キーワードを広告見出しや説明文に含めることは非常に重要です。
レスポンシブ検索広告では広告見出しや説明文を数多く入稿することで、ユーザーの検索語句とのマッチング率を高めることができます。
そこで検索語句により密接に関連した広告を配信することで、広告のパフォーマンス向上につなげることができます。
キーワード、広告見出しを増やすことでオークションでの入札数も増えるため、結果としてより多くの潜在顧客にアプローチできます。
このように、レスポンシブ検索広告では「広告文」と「検索語句」が密接に関連しているということを意識するとより良い広告文作成ができるようになります。
③訴求切り口に応じて広告グループを分け、各広告グループ内のレスポンシブ検索広告は「1つ」にする
レスポンシブ検索広告では広告グループごとに最大3個の広告を配信することができますが、Googleの推奨は「1つ」となっております。
明確な理由の発表はありませんが、1つのレスポンシブ検索広告に複数の広告見出しや説明文が設定できることを踏まえると、2つ以上を同時配信すると機械学習の最適化に支障をきたすのではないかと考えます。
しかし、広告文検討の際には、訴求切り口を変えたパターンをテストしてみたくなることもあるでしょう。
そういった場合は、前述①のとおり各広告見出しの数値にて判断するか、切り口によってニーズが異なる商材の場合は広告グループを分けて各キーワードに応じた広告文を配信するのも有効です。
まとめ
AI配信全盛の現在でも、まだまだ主力となっているであろう検索広告について、少し踏み込んだ内容にて執筆しました。
もっとも顕在層に近い広告であることから、他のキャンペーンよりも運用がしやすい反面、「どのタイミングで改善していけば良いか?」がつかみにくく、長い間放置し続けている方も多いのではないでしょうか?
一見、配信ボリュームの限界が来ているように思えても、効果的なキーワード追加による配信ユーザーの拡大や広告改善によるクリック率向上を図ることで、費用対効果を維持または向上させながらさらにCVを増やしていくことも可能かもしれません。
P-MAX、デマンドジェネレーション広告など新しいキャンペーンにどんどんチャレンジすることも決して悪くありませんが、まずは足元を見つめなおすつもりで検索広告のチューニングに取り組んでみてはいかがでしょうか?