web広告運用されている方なら、誰しもが経験することのある「管理画面上のCV数と実際の注文数が合ってない!?」ってことありませんか?
例えば、Google広告では10件、Meta広告では8件、合計18件のコンバージョン(以下:CV)が出ているはずなのに、Shopifyや自社カートの管理画面を確認すると、「12件」しか注文が入っていない…。そんなとき、「あれ?何かおかしい?」と不安になりますよね。
結論から申し上げますと「広告管理画面とECサイトの実績値が一致することはありません」
これは、実は不具合ではなく、計測の仕組み上「ズレるのが当たり前」なのです。
しかし、なぜズレるのか、どちらの数字を信じればいいのかを理解していないと、正しい判断ができません。
今回は、ECサイトと広告のCV数が合わない「5つの主要な原因」と、判断の考え方について解説します。
なぜ数字はズレるのか?計測の仕組みを知る
まず、広告プラットフォーム(Google広告、Meta広告、Yahoo広告、Microsoft広告など)とECサイト(ShopifyやMakeShop、自社カートなど)では、計測ロジックが根本的に異なります。
広告プラットフォームは「自社の広告がどれだけ貢献したか」を最大化して見せたい仕組みになっており、ECサイトの管理画面は「実際に売上がいくら発生し、在庫がいくつ減ったか」という事実を記録する仕組みなのです。
この違いによって、具体的な5つの原因を見みていきましょう!
1.CVをカウントするタイミングのズレ
最も多いのがこれです。多くの初心者が「CVが発生した日(購入日)」に数字がつくと思っていますが、広告プラットフォームの多くは異なります。
- ECサイトの管理画面: 「注文が完了した日」にカウント
- 広告管理画面: 「最後に広告をクリックした日」にカウント
12月25日にユーザーがGoogle広告をクリックしてサイトを訪問。その日は買わずに、3日後の12月28日にサイトを再訪して購入したとします。
- ECサイト: 12月28日に「1件」
- 広告: 12月25日に「1件」
月末に「今月の成果」を振り返るとき、この3日間のズレが累積し、最終的な数字が一致しなくなるのです。
2.複数の媒体による「成果の重複(ダブルカウント)
複数の広告媒体(Google広告、Meta広告、Yahoo広告、Microsoft広告など)を併用している場合、数字は必ず多く表示されます。
それぞれの広告媒体は、「自社の広告が少しでも関わったら、自分のCV」としてカウントするからです。
重複が起こる仕組み
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ユーザーが「①広告」をクリックしてサイトを見る(買わない)。
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数日後、「①とは違う媒体の②広告」を検索してクリックし、購入。
この場合、それぞれの管理画面はどうなるでしょうか?
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①広告: 「私の広告を見たおかげで買った!」 → CV 1件
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②広告: 「いや、私の広告を見て、購入した!」 → CV 1件
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ECサイト: 実際の注文は 1件
このように、媒体を増やせば増やすほど、各媒体が「自分のCV」を主張するため、合計CV数は実数よりも多く見えてしまいます。
3.アトリビューション(計測期間)と計測モデルの違い
各媒体には「アトリビューション・ウィンドウ(計測期間)」という設定があります。「広告をクリックしてから何日間までの購入を、広告の成果と認めるか」という期限のことです。
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Google広告・Yahoo!広告・Microsoft広告・LINE広告・X広告・SmartNews広告: デフォルトは30日間(変更可能)
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Meta広告・TikTok広告: デフォルトはクリック後7日間、または表示後1日間
また、「ビュースルー・コンバージョン」の存在も大きいです。 これは、「広告をクリックしていないけれど、画面に表示された(見た)ユーザーが、後に購入に至った」場合にカウントされる数値です。Meta広告やディスプレイ広告ではこれが多く含まれるため、ECサイトの実績値との乖離が激しくなる傾向があります。
4.ITPなどによるブラウザの計測制限
技術的な要因として、Appleの「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」に代表されるプライバシー保護機能があります。
Cookie(クッキー)の利用が制限されると、広告をクリックしたユーザーが数日後に購入しても、「あの日、広告をクリックした人だ」と特定できなくなります。
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広告管理画面: 計測漏れが発生し、CV数が少なく出る。
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ECサイト: 注文事実は残るので、CV数は正確。
最近では、この計測漏れを補完するために、各広告プラットフォームは「機械学習による推計(モデル化されたコンバージョン)」を導入しています。つまり、管理画面の数字の一部は「予測値」なのです。実数と合わないのは、ある意味で当然と言えます。
5.キャンセル、返品、テスト注文の有無
ECサイトの管理画面には、以下のような「売上に繋がらなかった注文」も一度は記録されます。
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注文後のキャンセル
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受け取り拒否、返品
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銀行振込で入金がなかった注文
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社内でのテスト注文
一方、多くの広告用CVタグは、サンクスページ(購入完了画面)が表示された瞬間に発火します。
その後、裏側でキャンセル処理が行われても、広告管理画面の数字は減りません。 これにより、広告側の数字が実数より多くなることがあります。
判断の考え方
数字が合わない理由がわかったところで、次なる疑問は「結局、どの数字を見て運用すればいいの?」ということです。
目的に応じて以下のように使い分けることを推奨しています。
広告の「最適化」には管理画面の数字を使う
各プラットフォームの管理画面の数字をベースにする必要があります。 「管理画面の数字は多少の重複や推計を含んでいる」と割り切った上で、「昨日より増えたか」「CPA(顧客獲得単価)のトレンドはどうなっているか」という相対的な変化を追うための指標として活用します。
「事業の健全性」にはECサイトの数字を使う
「今月、本当にいくら利益が出たのか?」を計算する際は、広告管理画面の数字を使ってはいけません。必ずECサイトの受注データ(確定値)を正としてください。
「MER」という指標を取り入れる
媒体ごとの重複を排除して、広告全体の効率を測るために、私たちはよく MER(Marketing Efficiency Ratio:広告費用対売上比率) を活用します。
MER =サイト全体の総売上/全媒体の合計広告費
例えば、特定の媒体のCV数が増えていても、サイト全体の売上が伸びていなければ、それは「他の媒体からCVを奪っているだけ(重複が増えただけ)」かもしれません。MERを追うことで、媒体間の「手柄の奪い合い」に惑わされず、投資判断ができるようになります。
最後に
「自社の場合、どの程度ズレているのか」を把握するために、過去3ヶ月分の「広告管理画面のCV合計」と「ECサイトの総注文数」を比較してみることをおすすめします。 一般的に、広告経由の売上比率が高いサイトでは、広告CVの合計が実注文数の1.2〜1.5倍程度に膨らむことも珍しくありません。自社の「標準的な乖離率」を知っておくだけで、日々の運用における不安はグッと少なくなりますよ。