従来のディスプレイ広告では、特に成果が良い広告に絞って配信を集中させることで、効率よく成果を伸ばすことができました。
しかし、Meta広告をはじめとするSNS広告の運用においては、配信の最適化を広告プラットフォーム側のアルゴリズムに任せる部分が大きくなっています。そのため、一つの広告セットの中で複数の広告を設定した方が、かえって成果が伸びやすい傾向にあります。
この背景から、現在では一つの広告セットに複数の広告を設定しているアカウントも多いかと思います。成果が好調なときは問題ありませんが、ひとたび状況が悪化すると、どの広告が原因か分からず「手に負えない」状態になってしまうケースも少なくありません。
そこで本記事では、実際の運用事例に基づき、以下の2点について考察を深めていきます。
- 配信が集中する広告にはどのような特徴があるのか
- 広告のローテーション(配信の切り替え)は、どのような条件や基準で行われているのか
Meta広告のアルゴリズムは日々進化しており、また、広告アカウントごとにその挙動が異なることもあります。本記事でご紹介するのはあくまで一例であり、すべてのケースに適用できるものではありません。しかし、この考察が、皆様のより良い広告運用の一助となれば幸いです!
対象アカウント情報
・概要:BtoCのECサイト
・検証期間:2か月間(2025年8月1日~9月30日。予算変更は9月初旬に1度)
・Meta広告の目的:コンバージョン ※ Advantage+ セールスキャンペーン不使用
・Meta広告のご利用金額:200~500万円
・1広告セットあたりの広告数最大10個(検証期間期間中に増減アリ)
検証期間中の各広告のインプレッション数

※9月に全体の予算を減額しているため、インプレッション数の総量が下がっております
Meta広告、配信が集中する広告にはどのような特徴があるのか

上図、黒枠に注目しました。
8/21~8/31の期間中は、Aが多くインプレッションされ
9/11~9/20の期間中は、Jが多くインプレッションされている傾向にあります。
これらの広告は他の広告と比べてどのような違いがあるのでしょうか。
結論としましては、配信期間中の他の広告に比べて
Aは、CPM(インプレッション単価)が安い傾向にありました。

Jは、CV(コンバージョン)が多い傾向にありました。

配信結果から考察する、集中して配信される広告の特徴
配信結果を分析すると、Meta広告のアルゴリズムが「コンバージョン単価(CPA)が良好な広告」を優先し、配信を集中させる傾向が見られます。
キャンペーンの目的をコンバージョンに設定している場合、まずCPAが低い、つまり費用対効果が高い広告が最も優先されます。
もし複数の広告のCPAに大きな差がない場合は、CPM、CVR、CTRといった、CPAを構成する要素のいずれかのスコアが高いものが選ばれて配信されると考えられます。
ご存じの方も多いかと思いますが、CPAは、CPM、CVR、CTRの3つの指標があれば算出が可能です。

特に、ニッチな商材やBtoBの商材を扱う場合、そもそもコンバージョンの件数が少なくなりがちです。その結果、CPAだけでは正確な優劣の判断が難しくなることがあります。
そのようなケースでは、CPAを構成しているCPM、CVR、CTRのスコアが良好な広告に配信が偏る傾向が見られます。
Meta広告、広告のローテーションはどのような条件で行われているのか

上図、黒枠「B」の広告に注目しました。
9/21~9/30の期間を除いて配信されておりますが、段階的に配信が縮小しております。
広告Bの主要な指標を確認したところ、
CVRが向上し、CPAも高騰している様子はなかったものの、CTRが段階的に下がっている傾向にありました。



配信結果から考察する、広告ローテーション(切り替え)の条件
大前提の話になりますが、Meta広告のアルゴリズムにおいて、クリック率(CTR)の低い広告、つまりユーザーにとって魅力が薄いと判断された情報は、配信が抑制されていく傾向にあると考えられます。
この背景には、Meta社(Facebook、Instagramなどを運営)が、一般ユーザーに自社サービスに長く滞在し続けてほしいという明確な目的があるからです。もし広告が原因でサービス利用時間が減ってしまうと、それは会社にとって本末転倒ですよね。
そのため、アルゴリズムはユーザービリティ(使いやすさ・快適さ)の観点から、コンバージョンが一時的に出ていたとしても、クリック率が低い広告はユーザーの興味を損ねる情報として判断し、配信を抑制していくと推測されます。
したがって、Meta広告における「良い広告」とは、単にコンバージョンが取れるだけでなく、ユーザーの関心を引きつけ、クリックを通じてスムーズな体験を提供できるクリエイティブであることが重要な条件となります。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
Meta広告のアルゴリズムは日々進化しており、それに伴ってその時々で重要視される指標も変化し続けています。
そのため、記事の冒頭でもお伝えした通り、本記事でご紹介した考察が、すべてのアカウントや全ての状況にそのまま当てはまるわけではないと考えております。もしかすると、反対の挙動を示すケースもあるかもしれません。
しかし、実際の運用データから得られた知見は、より良い配信戦略を検討する上で大いに役立つことが多々あります。
本記事の内容が、皆様の今後の広告運用における改善やヒントの一助となりましたら幸いです!