Google広告には、機会学習を使って入札単価を調整できる自動入札戦略というものがあります。手動での入札単価調整よりも費用対効果の高い運用が期待できる自動入札戦略ですが、使い方や使う場面を間違えると手動での調整よりもパフォーマンスが悪くなってしまうケースもあります。
本記事では、自動入札戦略の種類やメリット、運用する上でのポイントなどをご紹介致します。
自動入札戦略とは?
自動入札戦略とは、クリック数やコンバージョン数、コンバージョン単価、広告費用対効果(ROAS)など広告で達成したいKPIに対して自動で入札価格を調整する機能です。
自動入札戦略は全部で6種類あり、それぞれ違う特徴を持っているので、使用するシーンによって適応させる自動入札戦略も変わってきます。
自動入札戦略の種類
自動入札戦略は、大きく分けると「自動入札」と「スマート自動入札」の2種類に分類され、合計で6種類の入札戦略があります。「自動入札」と「スマート自動入札」、何が違うのかというと、「スマート自動入札」はコンバージョン獲得に特化している入札戦略になります。
クリック数の最大化 | 自動入札 |
目標インプレッションシェア | 自動入札 |
目標コンバージョン単価(CPA) | スマート自動入札 |
目標広告費用対効果 | スマート自動入札 |
コンバージョン数の最大化 | スマート自動入札 |
コンバージョン値の最大化 | スマート自動入札 |
クリック数の最大化
予算内でクリック数を最大化するために自動で入札単価が調整されます。また、上限クリック単価の設定も併用可能です。コンバージョン獲得がメインではないので、まずはアクセス数を集めたい、サイト流入を増やしたい方向けの入札戦略です。
目標インプレッションシェア
検索結果ページの上部・最上部、任意の位置に広告が表示されるように自動で入札単価が調整されます。例えば、検索結果ページの上部でインプレッションシェア率を70%に設定した場合、検索結果ページの上部に表示される可能性が1000回あると800回の広告表示を目標に入札単価調整されます。
この入札戦略も上限クリック単価の設定が可能ですが、上限クリック単価の設定を低くしすぎると広告の露出が極端に少なくなってしまうので注意が必要です。
目標コンバージョン単価(CPA)
設定した目標コンバージョン単価を達成するために自動で入札単価が調整されます。広告費をより効率的に使用したい方向けの入札戦略です。
また、目標コンバージョン単価の設定を低くしすぎると、広告の配信量が減少して機会損失に繋がってしまうので、状況を確認しながら設定する値を修正していくと良いでしょう。
目標広告費用対効果
目標がコンバージョンではなく、「売り上げ」の場合に最適な入札戦略で、ECサイトなどコンバージョンごとの価値が異なる場合にROAS(広告の費用対効果)を重視して、自動で入札価格が調整されます。
この入札戦略も設定するROASの値を高くしすぎると、広告の配信量が減少して機会損失に繋がってしまうので、適切な値での設定がポイントになります。
コンバージョン数の最大化
とにかくコンバージョン数を重視して自動で入札単価を調整する入札戦略です。もちろん獲得単価の高騰やクリック単価の高騰リスクもありますが、目標コンバージョン単価(CPA)の設定も併用することができます。
コンバージョン値の最大化
とにかく売り上げを最大化できるように自動で入札単価が調整される入札戦略です。ECサイトなどに向いている入札戦略で、高価値な顧客の獲得を目指します。
自動入札のメリット
工数削減
手動入札では広告主がキーワード毎に入札単価を調整していましたが、自動入札では入札単価はすべて自動になります。そのため、入札の手間が省け、コア業務に時間を割くことができます。
数キーワードの場合だと、そこまで時間もかからないですが、商品を大量に取り扱っているECサイトなどで検索広告を配信している場合は大量のキーワードが設定されているので、とてつもない工数の削減となります。
パフォーマンスの向上
機械学習がうまく進んで安定した時の継続的なパフォーマンスの向上は一番のメリットではないでしょうか。自動は手動に勝てないと思わされるくらいの成果を出します。入札価格の自動調整だけでなく、次でご紹介する複数のシグナルが活用されているので、当然といえば当然なのですが・・・。
シグナルを活用した詳細なターゲティング
様々なシグナルを拾って機械学習を行い、入札単価の調整を行えるのがメリットです。手動調整だと見切れないくらいのシグナルで、そもそも手動だと関与できない内容あります。以下、シグナル一覧になります。
デバイス | ユーザーの使用デバイス(モバイル、パソコン、タブレット)に基づき、入札単価が最適化される。 |
所在地 | ユーザーの所在地(都市レベル)に基づいて入札単価が最適化される。 |
地域に関する意図 | ユーザーの所在地に加え、地域に関する意図にも基づいて入札単価が最適化される。 |
曜日と時間帯 | ユーザーのタイムゾーンでの現地時間や曜日に基づいて入札単価が最適化される。 |
リマーケティングリスト | ユーザーが登録されているリマーケティング リストに基づいて、入札単価が最適化される。 |
広告の特性 | モバイルアプリ用かどうかも含め、表示される広告のパターンに基づいて入札単価が最適化される。 |
表示言語 | ユーザーの言語設定に基づいて入札単価が最適化される。 |
ブラウザ | ユーザーが使用しているブラウザに基づいて入札単価が最適化される。 |
OS | ユーザーが使用しているオペレーティング システムに基づいて入札単価が最適化される。 |
実際の検索語句 | 広告掲載の対象となった検索で、一致したキーワードだけでなく、実際の検索語句に基づいて入札単価が最適化される。 |
検索ネットワークパートナー | 広告が掲載される検索パートナー サイトに基づいて入札単価が最適化される。 |
自動入札のデメリット
成果が安定して出るまで時間がかかる
自動入札の機械学習は通常2週間~3週間程度かかるとされており、場合によっては1か月以上の時間がかかります。特にデータが少ないキャンペーンでは結果が出始めるのが遅いとされています。
挙動が安定するまでは成果が出ていなくても、そもまま学習させておく必要があるので、運用者としては少し精神的なダメージもありますね。
配信量が減少するケースもある
自動入札で目標設定している値に対して、達成困難だとシステムが判断すると入札単価が極端に下がり広告の配信量自体が少なくなってしまうケースがあります。逆にこの仕組みを活用して、目標値の上げ下げで配信量を調節することもできるので、そこはメリットになりうるかもしれません。
個別で柔軟な調整ができない
自動での調整になってしまうので、広告主は細かく入札価格をコントロールすることはできません。もし、ある一定のキーワードだけ配信を強めたいなど、特別な戦略がある場合は柔軟に対応できないため、別キャンペーンで実施する必要があります。
自動化が進む一方で、手動調整の方が効果的な場合もあるので、どちらにも対応できるように準備しておくと良いでしょう。
効果的に運用するためのポイント
コンバージョンポイントの見直し
コンバージョンの獲得を目的とする入札戦略を使用するのであれば、過去一か月の配信で30件のコンバージョン獲得が必要です。そもそもそんなにコンバージョン取れないという場合は、マイクロコンバージョンを設定し、学習に必要なコンバージョンの数を増やしましょう。
できるだけ本コンバージョンに近しい行動をマイクロコンバージョンとして設定する方が良いので、「入力フォームページ到達」や「商品をカートに追加」などの設定がおすすめです。
シンプルなアカウント設計
自動入札はGoogleの機械学習を用いるため、データ量が多い方が当然精度も上がり、成果が出やすくなります。学習するデータをより多く蓄積できるようなシンプルなアカウント設計が望ましく、1広告グループ1キーワードのようなアカウント設計では中々データが蓄積されないので注意しましょう。
インテントマッチキーワードの併用
自動入札の効果を最大限発揮するためにインテントマッチのキーワードを使用しましょう。インテントマッチでは完全一致、フレーズ一致では拾えないシグナルを持っており、Google側からも自動入札を使うならインテントマッチを併用した方が良いと推奨されています。
ただし、インテントマッチは拡張性が高いマッチタイプなので、頻繁にキーワードの除外設定が必須になってきます。
一気に数値を変更しない
基本的に、学習期間中は設定を変更しない方が良いとされています。自動入札の学習期間は約二週間~三週間ほどかかり、その期間内で良かったパターンや悪かったパターンを学習するので、何かしらの設定を変更するとAIが混乱し、学習に悪影響を及ぼす可能性があります。
もし、どうしても何かしらの設定を変更したい場合は、一気に変更せずに少しづつ変更を加えるようにすると良いでしょう。
まとめ
運用型広告では、機械学習による自動化の流れになっており、成果を出すためには自動入札戦略の仕組みの理解と選び方が重要です。手動から自動に変更して成果が悪くなってしまったからまた手動に戻す。そんな経験がある方は、目的とする入札戦略の見直しや、学習期間、データ蓄積などを考慮し、再度自動化に挑戦していただきたいです。
とはいえ、まだまだ手動調整でしかコントロールできない部分もありますので、手動と自動、どちらも併用してバランスよく広告運用を進めていただければと思います。